指導者と保護者の温度差。少年野球を壊すのは大人の一言から

指導者と保護者の温度差。少年野球を壊すのは大人の一言から

少年野球をやっていると、「子どもよりも大人の方が難しい」と感じることが本当に多い。
子どもたちは意外とまっすぐだ。
負ければ泣き、怒られれば次の日に頑張る。
でも大人は、感情や立場、プライドが絡む。
そして気づけば、いつの間にか子どもより大人の方が熱くなっていることもある。

俺がこの数年間で感じたのは、
少年野球を壊すのは、子どもではなく大人の一言だということ。
どんなにいいチームでも、指導者と保護者の“温度差”が広がると、
チームの空気は一気に悪くなる。

少年野球は“子ども”のためのはずなのに

少年野球は、子どもの成長のためにある。
そのはずなのに、いつの間にか「大人の意見」が主役になる。

「なんでうちの子の方が頑張ってるのに外野なんだ!」
そんなふうに言い寄ってくる保護者もいる。
中には、怒られて泣いている子どもを母親が端に連れていって慰める光景もある。
試合後に「練習方法が悪い」「コーチが厳しすぎる」と文句を言う人もいた。

一方で、夏場に「もっと母の人数を増やして子どもを見守れ」と
保護者に負担をかけようとする指導者もいる。
結局、どちらにも正義がある。
だけど、どちらにも“やりすぎる危うさ”がある。

少年野球は子どものための場所なのに、
気づけば大人の意見と感情でチームが揺れる。
そして一番置き去りにされるのは、
いつもグラウンドに立つ子どもたちだ。

指導者も、保護者も、それぞれの立場で本気

指導者も保護者も、みんな子どものことを思っている。
でも、その“思いの形”が違うからぶつかる。

俺たち指導者は、勝つことよりも“子どもの成長”を考えて指導している。
怒るのも、叱るのも、子どもの先を見ているからだ。
でも保護者からすれば、「うちの子ばかり怒られてかわいそう」と感じる。
その気持ちも、親としては当たり前だと思う。

実際、俺たち指導者も完璧じゃない。
イライラして言いすぎてしまうこともある。
それで子どもが落ち込み、親が心配するのも当然だ。

結局のところ、どちらも「子どものために」が根っこにある。
だからこそ、すれ違う。
こっちを立てるとあっちが立たない。
どれだけ考えても、全員が納得する形なんて存在しない。
俺たち指導者も毎日頭を抱えているし、
保護者も保護者で「どうしたらいいか」と悩んでいる。

大人の衝突が、子どもの気持ちを壊していく

うちのチームはまだ落ち着いている方だが、
まわりを見れば「親の問題」で崩れていくチームを何度も見てきた。

監督への不満、コーチ同士の対立、母親グループの分裂。
たった一言の陰口や、LINEグループでの一文が、
信頼関係を一瞬で壊してしまう。

そしてその空気は、すぐに子どもたちに伝わる。
「うちの親が言ってた」「監督と揉めてるらしいよ」
そんな話を耳にする子どもたちは、
どんどん野球を楽しめなくなっていく。

本来なら、グラウンドは子どもたちが一番輝ける場所のはず。
でも大人がその空気を濁らせてしまうと、
子どもたちは「野球=大人のストレスの場」だと感じてしまう。

少年野球を嫌いになるのは、
野球そのものじゃなく、“大人の空気”なんだと思う。

それでも、支える大人たちがチームを救う

そんな中でも、いつもチームを支えてくれる大人たちがいる。
文句も言わず、陰で動き続ける保護者。
グラウンド整備を手伝い、荷物を運び、
自分の子どもが出ていなくても、最後まで声を出して応援してくれる。

そういう人がいるチームは、強い。
結果的に、子どもたちの雰囲気も良くなる。

同じように、指導者側にも本気でチームを支える人がいる。
決して完璧ではないけれど、
子どもたちのために時間を使い、怒り、悩み、考えている。

だからこそ、
「保護者 VS 指導者」という構図ではなく、
「子どもたちのために一緒に動く仲間」として
お互いを信頼し合える関係が理想なんだ。

主役は、いつだって子どもたち

確かに、文句を言いたくなることもある。
納得できない指導、理解できない親の行動。
でも、ひとつだけ忘れてはいけないことがある。

主役は、子どもたち。
このシンプルな事実を、大人が忘れた瞬間にチームは壊れる。

俺たち大人が感情的になったり、立場を守ろうとしたりするたびに、
その影響は必ず子どもたちに届く。
だからこそ、まずは「子どものため」という一点で繋がること。

大人が変われば、チームは必ず変わる。
その空気を作れるのは、指導者でもあり、保護者でもある。

少年野球を支えるすべての大人たちが、
「主役は子ども」という原点を忘れなければ、
どんなチームも、きっともっと良くなる。



保護者と指導者の距離感。その難しさは、勝敗の裏にもある。
それを“指導者の視点”から書いた記事がこちら。



グラウンドから綴る Written on the Field

鬼コーチ

鬼コーチ

子どもたちには厳しいけれど、本気で成長を願っている「鬼コーチ」です。 怒るのは、技術じゃなく“心”の部分。 教えているつもりが、いつも子どもたちに教えられています。

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