中学野球はどうする?硬式・軟式・部活それぞれのリアルな違い

中学に上がるとき、誰もが一度は悩む。
「硬式のクラブチームに入れるか」
「中学の部活で軟式をやらせるか」。
少年野球を見てきた親ほど、その選択の重さを感じているはずだ。
けれど、どちらが“正解”という答えはない。
俺自身、中学では硬式クラブに進んだ。
だからこそ分かる、硬式・軟式・部活のリアルな違いを、
親の立場と経験者の立場、両方から話したい。
俺も“本気になれなかった子ども”だった
偉そうに言ってるけど、
俺も小学生のころは、今の息子とまったく同じだった。
仲のいい友達とつるんで、ふざけながら野球をやっていた。
試合では目立つタイプだったけど、
本気で取り組んでいたかと言われれば、そうじゃない。
正直に言えば、上手かったから許されてたタイプだ。
でも当時の少年野球は今とはまるで違った。
エラーをすれば殴られ、三振すれば蹴られ、
フォアボールを出せばグラウンドを何十周も走らされた。
怖い監督がいない日は、みんなでへらへら。
今の子どもたちを見ていると、あの頃の自分を重ねることがある。
本気でやってるように見えて、実は“怒られないようにやってる”だけ。
俺もそうだった。
そんな俺も中学では硬式のクラブチームへ進んだ。
中学では硬式クラブへ。でも、それは“自分の意志”じゃなかった
小学校を卒団して、俺は硬式クラブチームに進んだ。
同じチームの仲間4人と一緒に。
正直、特に理由もなかった。
「みんなが行くから、俺も行く」──ただそれだけ。
当時のクラブチームは今とは比べものにならないほど厳しかった。
水は飲めない。
ミスをすれば怒鳴られ、時には手も飛ぶ。
勝つためだけの野球。
それでも最初のうちはなんとなく続けていた。
けど、中学2年になる頃には完全に気持ちが切れていた。
怖さで縛られる野球に、もう“楽しさ”なんてなかった。
それでもレギュラーだった。
辞める勇気もなかった。
ただ惰性で、最後まで続けた。
そして高校に進むとき、俺は野球をやめた。
今でも思う。「もしかしたら軟式だったら続いてたかも」
たまに思う。
もし俺が中学で、ぬるい環境でもいいから“部活の野球部”に行っていたら、
野球の実力は置いといて、
高校でも野球を続けていたかもしれない。
厳しすぎる環境で燃え尽きた俺には、
あの頃の“怖さ”の記憶しか残っていない。
「勝つため」「怒られないため」にやる野球は、
子どもの心をどこかで壊してしまう。
高校で野球をやらなかったことを、俺は今でも後悔している。
だからこそ、息子には同じ思いをさせたくない。
厳しい環境=正解、ではない
今の少年野球や中学野球を見ていて思う。
「厳しい環境に行けば伸びる」なんて考えはもう古い。
厳しさが必要な時もある。
でも、“合ってない厳しさ”は毒になる。
逆に、優しいチームがダメかといえば、そうでもない。
自分のペースでのびのびやれる子もいる。
つまり、その子にとってどんな環境が一番合っているかを
大人がちゃんと見極めることが大事なんだ。
環境よりも、“その子をどう見るか”
親として思うのは、
「強いチームに入れれば上手くなる」でも、
「弱いチームに行ったら下手になる」でもない。
すべては子どものやる気次第。
もちろん、良い指導者のいるチームは理想だ。
けど、どんなに評判がいいコーチでも、
別の子にとっては合わないこともある。
逆に、他の親から評判の悪いチームでも、
自分の子にとっては居心地が良い場合もある。
入ってみなきゃ分からない。
でも、入る前に一番大事なのは、
チームを見極めることじゃなく、我が子をちゃんと見ること。
どんなタイプなのか。
どういう環境なら頑張れるのか。
そこを見誤ると、せっかくの“野球人生”がつらいものになってしまう。
そして今、俺は“待っている”
俺の息子はいま、小学6年生。
まさに進路を決めるタイミングだ。
けど俺は、あえて何も言っていない。
聞いてもいない。
「ここがいいんじゃないか」と思うチームはいくつかある。
でも、それも今は胸の中にしまってる。
まずは、自分の意志でどんな道を選ぶのかを見たい。
そのうえで、もし息子が迷ったら、
“選択肢の一つ”として俺の考えを渡すつもりだ。
強制はしない。
俺の過去を押しつけるつもりもない。
親としてできることは、
見守ることと、支えること。
その2つだけだと思っている。
環境選びより「子どもを理解する力」
俺が言いたいのは、たった一つ。
“厳しい環境=正解”じゃない。
親の理想や見栄で進路を決める前に、
一度立ち止まって、子どもの姿をちゃんと見てほしい。
本気でやれる環境は、チームの強さじゃなく、
その子が「やりたい」と思える空気の中にある。
子どもの野球人生は、親の延長戦じゃない。
一番大事なのは、「この子がこの先も野球を好きでいられるか」。
それだけだと思う。
進路を考える前に、チームそのものをどう見るかも大事だと思う。
グラウンドから綴る Written on the Field

鬼コーチ
子どもたちには厳しいけれど、本気で成長を願っている「鬼コーチ」です。 怒るのは、技術じゃなく“心”の部分。 教えているつもりが、いつも子どもたちに教えられています。