少年野球は難しい。でも、そこにしかない“何か”がある。

少年野球のコーチをやっていると、
「大変そうだね」「よく続けられるね」と言われることがある。
確かに大変だ。
平日は仕事、週末は朝から夕方までグラウンド。
車出し、審判、当番、イベントの準備。
チームは、指導者だけでなく保護者全員の協力で成り立っている。
それは野球に限らず、サッカーでもバスケでも同じだと思う。
でも、俺はこう思う。
この“忙しさ”こそが、親にとっての幸せな時間なんじゃないか。
子どもと同じグラウンドに立てるのは今だけ
3年生で始めた我が子も気づけばもう6年生。
ついこの間まで3年生で、まだユニフォームもブカブカだったのにな。
ノックを受けて転がるたびに笑っていたあの頃が、もう遠い昔に感じる。
この数年、毎週のようにグラウンドに立ってきた。
夏の日差しで肌が焼け、冬の朝は霜でボールが転がらない。
平日の夜は仕事でクタクタになっても、週末になると自然と体が動く。
ユニフォームを着て、子どもと一緒にグラウンドに向かう。
それだけで、胸の奥が少し熱くなる。
親として、指導者として、仲間として。
同じグラウンドで過ごせる時間は、ほんのわずかだ。
中学生になれば、もう親と一緒に練習することも、
グラウンドで背中を並べることもなくなる。
だからこそ、今この瞬間がどれだけ尊いかを噛みしめている。
少年野球ってのは、確かに大変だ。
休みはほとんど潰れるし、時間もお金もかかる。
でもこの時間は、俺にとって**「人生で一番心が動く時間」**だと思ってる。
朝日が差し込むグラウンド、子どもたちの声、
そのすべてが、今だけの宝物だ。
怒鳴るのは本気だから。息子に厳しくしてしまう俺
俺は自分でも分かってる。
怒鳴るタイプのコーチだ。
今の時代には合ってないかもしれない。
でも、どうしても抑えられない瞬間がある。
「もっと声を出せ!」「集中しろ!」
そう叫んだあとに、ふと静かになる時間がある。
子どもたちが黙りこくって、俺の顔を見てる。
その沈黙が、いちばん胸に刺さる。
俺は、技術ミスには怒らない。
怒るのは、姿勢だ。
挨拶をしない、仲間に感謝できない、
真剣にやっていない。
そういう時に、怒鳴ってしまう。
それは、“勝ち負けよりも大事なもの”を伝えたいからだ。
けど一番難しいのは、自分の息子に対して。
やっぱり厳しくなってしまう。
「他の子と同じには見れない」って分かってるけど、
息子が甘えてるように見えると、つい声が出る。
時には手を上げてしまったこともある。
泣きながらベンチに座る息子を、
仲間たちが囲んで「大丈夫だよ」って声をかけていた。
その姿を見て、
俺は“叱る”ことと“傷つける”ことを、ちゃんと分けられてなかったと気づかされた。
その夜、風呂場で息子の背中を流しながら、
「悪かったな」と言ったら、
「俺も頑張るから」と小さく返ってきた。
あの一言は今でも忘れられない。
教えているつもりが、子どもたちに教えられている
指導者ってのは、教える側のようで、実は一番学んでる。
子どもたちを見てると、時々ハッとさせられる瞬間がある。
試合でエラーをした子が、
「ごめん!」って叫んで、全力で守備位置に戻る。
その後、チーム全員が「ドンマイ!」って声を出した。
その光景を見たとき、胸が熱くなった。
失敗しても責めない。誰かのために声を出す。
それが自然にできる子どもたちに、俺たち大人は何を教えられるんだろうと思った。
仲間の活躍に心から喜び、
仲間の涙に自分のように悔しがる。
そういう感情を、大人になるにつれて失ってきた気がする。
俺はあの子たちに、野球を教えてるんじゃない。
**「仲間と生きる力」**を、俺の方が教えてもらってるんだ。
試合が終わってベンチで見せるあの笑顔。
勝っても負けても、全力でやりきった顔。
それを見てると、
「コーチやっててよかった」って心の底から思う。
子どもよりも、大人の方が難しい
少年野球で一番やっかいなのは、子どもじゃない。大人だ。
親が子どもより熱くなりすぎる。
自分の子しか見えてない親。
練習には来ないのに、試合のときだけ現れて文句を言う親。
ポジションに不満を言う親。
他の子の成長を妬んで、態度に出す親。
そんな親を見てると、
「子どもたちは純粋なのに、なんで大人が壊していくんだ」って悔しくなる。
少年野球は、家庭の数だけ考え方がある。
「怒っちゃダメ」「優しく見守るだけ」「うちは勉強優先」
どれも間違いじゃない。
でも、グラウンドではひとつのチーム。
それをまとめるのがどれだけ難しいか、毎週痛感してる。
けど、救いもある。
グラウンド整備を黙って手伝ってくれる親。
毎試合、声を出して応援してくれる母親。
差し入れをくれるおじいちゃん。
少年野球は“面倒な親”の集まりじゃなく、“支え合う家族”の集まりでもある。
良い人ばかりじゃない。
でも、そこに確かに“チーム”がある。
それを見てると、「まだこの世界は捨てたもんじゃない」と思える。
少年野球は難しい。だから面白い。だから続けたい。
俺はこの数年間で、何度も「もう辞めようかな」と思った。
怒鳴って、落ち込んで、帰り道で一人反省する夜もあった。
だけど、次の朝にはまたグラウンドに立ってる。
それが俺の生き方なんだと思う。
少年野球は本当に難しい。
でも、難しいからこそ、そこにしかないドラマがある。
うまくいかないことが多い。
でも、その中で少しずつ変わっていく子どもたちの姿に、
俺も一緒に成長させられている。
子どもたちの成長は、数字では見えない。
声の出し方、仲間との接し方、
エラーした後の立ち直り方。
その一つひとつに、人としての変化がある。
それを間近で見られるこの時間は、何ものにも代えがたい。
このブログで伝えていきたいこと
このブログでは、少年野球に関わるすべての人のリアルを書いていく。
指導者としての悩み、親としての葛藤、
そしてグラウンドで起きた奇跡みたいな瞬間を残していきたい。
俺は特別なコーチでも、立派な親でもない。
ただの“グラウンドに立ち続けてる一人の大人”だ。
でも、その中で感じたことを、
言葉として残すことには意味があると思ってる。
同じように悩むコーチや保護者が、
「俺もそうだよ」って少しでも共感してくれたら嬉しい。
そして、これを読んでいるあなたが、
子どもと一緒にグラウンドに立つ時間を、
ほんの少しだけ大切に思ってくれたら、
それだけでこのブログの意味がある。
少年野球は難しい。
でも、このグラウンドには、
言葉にできない“何か”が確かにある。
この「難しさ」の正体をもう少し掘り下げるなら、こちらも読んでほしい。
グラウンドから綴る Written on the Field

鬼コーチ
子どもたちには厳しいけれど、本気で成長を願っている「鬼コーチ」です。 怒るのは、技術じゃなく“心”の部分。 教えているつもりが、いつも子どもたちに教えられています。
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